リーマンショック後、世界最速の景気回復を遂げた台湾(後編)
後編です。
リーマンショック後、台湾が劇的な景気回復を遂げた理由の2つめに
台湾政府の頭脳的戦略があります。
台湾は2009年、相続税を50%から10%へ大幅に引き下げました。
海外に分散投資をしているお金、台湾人または、台湾系の華僑のお金を
自国に引き戻す戦略です。
日本では政策的な兼ね合いから海外の投資案件を知る機会が少ないですが
海外に目を向けると魅力的な投資案件はたくさんあります。
そんな大金持ちの台湾人は海外での分散投資を、
利益やリスクヘッジという目的以上に
高い相続性から逃れるために、資金を退避させたり、
移住したりするケースが多いのです。
馬英九政権が行ったこの相続税の大幅値下げが、
台湾が大きな成長を遂げるための起爆剤になります。
リーマンショック後、09年1月には底をうち、2月には反転上昇。
09年第4半期は年率で10%を超えるプラス成長を記録するのです。
但し、相続税の減税だけで台湾経済が劇的転換を遂げたわけではありません。
そこに中国の内需が密接に関係してきます。
リーマンショック後、中国政府は日本のエコポイントを先取りする形で
「家電下郷」をやりました。
農村部、内陸部への景気刺激策として、家電製品を購入した場合に
補助金を出す精度です。
これで台湾企業は非常に活性化しました。
当時、中国には品質のいい部品を作る能力はまだまだ低く
HP(ヒューレット・パッカード)やDELLなどのパソコンは
中国で生産されている裏側で、
その95%は台湾企業によって作られることになるのです。
台湾は中国の家電下郷政策にうまく乗っかる形で成り上がったのです。
その結果、前編でお伝えした、
中国の輸出企業ランキングベスト10社の話へと続くのです。
10社中6社が台湾企業なのです。
中国の台湾企業、輸出金額ランキング上位4割に=大和総研
しかしここで問題が発生します。
中国とASEANとのFTA締結です。
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FTA(自由貿易協定)とは
物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易等の障壁など、
通商上の障壁を取り除く自由貿易地域の結成を目的とした、
2国間以上の国際協定である。
参考資料:みずほ総合研究所
(PDF)開始後1年の中国-ASEAN FTA
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危機感を募らせた台湾は2010年6月29日
中国との間で実質的なFTAとなるECFAを締結します。
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ECFA(Economic Cooperation Framework Agreement)とは
中国・台湾間における自由貿易協定(FTA)に相当する経済協力枠組み協定。
中台では「両岸経済協力枠組協定」と呼ばれている
ECFA締結内容
中国、台湾双方の交流窓口機関は2010年6月29日、ECFAを締結。
1949年の中台分断後、包括的経済協定締結は初めて。
経済の一本化がさらに進む。関税が撤廃される品目は、中国側が539
台湾側が267。台湾の有力産業である石油化学製品や機械が中心。
3段階で引き下げ、3年目(2013年)には全品目で関税をゼロにする。
関税撤廃で台湾企業の中国市場における優位性が高まるのは確実。
内容は台湾にとって有利だが、中国の譲歩は台湾の民心を取り込み
将来の中台統一の布石を打つ狙いがある。
中国市場で台湾と競合する日本や韓国が中国との貿易のあり方を
再検討する必要に迫られる
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田崎副総経理は言う
「ECFAへの台湾の期待感はすごいものがあります。
まず、中国からの投資が相当活発化するだろうという期待。
中国、台湾が中華圏として一体化すれば、中国からの投資がこの先増える。
旅行者も増える、中国企業の台湾進出も増える。
だからオフィス賃料も商業施設の賃料も上がるしホテルも足りなくなる
そして建設ラッシュが起きています。
中国マネーが大量に台湾に流れ込んでくると確信しているから
株式でも先攻期待感が強まる一方なんです」
今や台湾では億ションが瞬間的に完売になるそうです。
台湾ドルで億ですから、日本円で言うと3~4億円のマンションです。
日本人にとってはバブル時代を思い出す光景ですが、
台湾人、中国人曰くそれは実需だと言います。
住居、としてではなく投資という意味合いを強く持つ実需なのでしょう。
以上、この2つが台湾経済が大きく飛躍させ
台湾人をアグレッシブにさせる要因となっているのでしょう。
日本にとっても、台湾の存在意義はこの数年で様変わりしたと言われています。
下請け業者から貴重なパートナーへ。
台湾の香港化を目論むしたたかな中国相手に
絶妙な平衡感覚を維持し続けなければならない台湾にとって
今後の日本との密接な関わり方が重要になってくるでしょう。
参考資料
※財部誠一様著書
アジアビジネスで成功する25の視点 (PHPビジネス新書)より
[…] ECFAの影響もあり、台湾の2300万人というマーケットを架け橋として […]